■聞き取りを記述する意義

1 素材を輝かせるための基礎

文章を書くときに、何らかの資料を見ることが必要になる場合があります。このとき、資料を使うのか、資料に使われるのか…ということがしばしば問われます。どっちが主で、どっちが従であるかが問題です。当然、文章を書く側が主でなくてはなりません。

そのためには、どんな理由で、その資料を使うのか、明確になっていることが必要です。資料を自分の言いたいことをいうために利用することになります。資料の趣旨を曲げずに、資料の言うことを反映させることによって、自分が言いたいことを言うのです。

したがって資料は、文章を書く側の言いたい内容を補強する要素となります。今まで見慣れた資料の、その本来の意味が見いだされるのは、こういう場合でしょう。資料に新たな光を当てることによって、素材を光り輝やかせることも可能だということです。

 

2 頭に全体図を描く

業務のことを聞き取りする場合、業務の全体像を把握してから聞き取りをするのが原則です。聞き取りをするとき、業務全体の組み立てられ方を考慮した上で、質問していくことになります。相手の地位に合わせて、どこにポイントを置くかを考えるのです。

業務の全体がどう構築されているのか…を頭に描いた上で質問するならば、質問者が主体的な地位に立つことも可能でしょう。この人の発言は、全体の中のどこに位置づけられるのか、どんな発想で業務をとらえているのかが、見えてくるということです。

どういう聞き取り方をすればいいのかというのは、じつのところ、先に全体図を頭に描けるかどうかで決まります。これができないと、業務マニュアルはなかなかうまくいきません。何だか難易度が高いように見えます。しかし手順を踏めばいいのです。

 

3 聞き取って記述する意味

資料の言う趣旨がどんなものか、それを聞き取ることが大切なように、実務のありかたがどうであるかを見るとともに、その目的を把握していくことが必要になります。先に目的があって、それを実現するために、目標が設定され、さらに手段が決まるのが原則です。

これは大きな業務に限りません。ある領域の限られた範囲内であっても、何のために、それを行うかという目的があるはずです。簡単にいえば「どうしたいから、どこまでやる」ということです。「どうしたいから」が目的、「どこまで」が目標です。

安全重視というのは抽象的ですから、どこまで実行すべきかの目標設定が大切になります。現場では特に目標設定が重要です。聞き取るときにも、自然に聞いていると目標設定と、その達成手段の話に傾いていきます。「どうしたいから」を聞く必要があります。

先に目的があって、それを客観基準に落とし込んで、その手段を考えるというのは、ビジネスに限った話ではないでしょう。実際のところ、これがきれいにいっているわけではありません。聞き取って記述する意味があるのは、それを確認するためです。

 

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