■キンドルバーガー博士の勉強法:『現代経済学の巨星』から

 

1 「メモのメモのメモ」

以前、伊藤元重の『東大名物教授がゼミで教えている人生で大切なこと』にある話をもとに、キンドルバーガー教授の勉強法について書いたことがあります。それが【世界的経済学者の勉強法:キンドルバーガー方式】でした。とても参考になる方法だと思います。

これはと思う本や資料に線を引き、必要に応じてメモをしておき、それをタイピングしてまとめます。このメモのノートを集めておき、それがたまってきたら、今度はタイピングしたメモに線を引きながら、思いついたことをメモしていくという方法です。

本を読んで思いついたことをメモしていき、そのメモからさらに自分の考えを引き出していく方法は使えると思いました。[メモのメモのメモ(memo on memo on memo)]ができる[頃になれば1冊の本が出来上がる準備が完了する]ということです。

 

2 「ノートブック手法」

キンドルバーガー博士は『現代経済学の巨星』(上)で自ら勉強法について語っています。基本は同様、[これはと思う文章や考え方のところに鉛筆でチェックをつけ、あとでノートブックにタイプ]することです。ご本人は[ノートブック手法]と記しています。

[ノートブック手法はたぶん、経済学一般についてよりも経済史にもっと適している]ということですが、経済学でなくビジネスをする人間にとってもノートがよさそうです。キンドルバーガー博士は[私はカードが嫌いだ]と率直に語っています。

カードの場合、枚数が膨大になります。タイプしたノートを3穴のバインダーにまとめておくのが[取り扱いや情報取出しには一番良い]と考えているのです。博士の[机の後ろの床上には、だいたい二十五冊から三十冊のバインダーが置いてあ]るとのこと。

[表裏にびっしりとタイプした五、六ページのノートを持っているなら、二度と原本を見る必要はない]と思うほどの充実した内容を詰め込むことができるのです。これらが何十冊のバインダーになるほど蓄積されてきたら、それは強力な武器になることでしょう。

 

3 「研究発想」のファイル

博士はノートの注意点を記しています。タイプしたノートがあっても[関心の対象が変わると、重複は多いけれど新しい一連のノートを必要とする]のです。博士の友人が同じ本のノートを作ったとき[重複部分はわずか50パーセントにすぎなかった]とのこと。

▼分厚い本の場合、私は数セットのノートを作り、その上に「一時的興味のもの」とか「金融史だけ」とかのマークをつけて、読書が限定的なものないしは特別の目的のためのものだったということを、それと分かるようにしておく。(p.203)。

さらに[生産的だと知った仕事習慣]として[「研究発想」のファイルをこしらえておく]ことをあげています。[1ページ程度のアウトラインを書き、それから各節または各章についての1ページ・アウトラインを書いてみること]というのが基本です。

大きなプロジェクトなら[アウトラインの中の章部分をそれぞれ拡大していくことで全体が出来上がってしまうだろう]。ただ全体の[明瞭な筋書きを持たぬ]場合、[作業の全体像が徐々に形を成していく過程で何回もの書き直しが必要となるかもしれない]。

聡明な完璧主義者であるより、[仕事を気楽に生み出す能力を持った通常の知性の人間]を選ぶと博士は記します。こうしたキンドルバーガー方式というべき勉強法は、われわれでも実践できそうです。伊藤元重に語ったメモの話とともに、とても参考になります。

 

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